年金は増やせる、受け取る年齢という選択
年金は65歳から受け取るとは限りません。東京都、群馬県、北海道に暮らす3人の事例から、受け取る年齢を選ぶという制度と、住む場所によって年金の重みが変わることを考えます。
年金を受け取る年齢は、自分で選べます
年金は65歳から受け取るものだと思われがちです。でも、時期は自分で選べます。早めることも、遅らせることもできますが、選ぶのは自分です。
東京都の田中誠一さんは65歳。今も働いているので、年金を遅らせる余裕があります。群馬県の石川良子さんは68歳で年金だけで暮らし、北海道の佐藤武さんは70歳、60歳から早めに受け取り始めました。同じ年金でも、選び方は人それぞれです。
待つと増える仕組みと、その裏にある損得
受け取り始める時期を1か月遅らせるごとに年金額は0.7%増え、70歳まで待てば+42.0%、75歳まで待てば+84.0%になります。増え方は、あとで変わりません。
増えた分は、一生続く仕組みです。長生きするほど、遅らせた効果は大きくなるのが実情です。反対に、受け取る前や早い時期に亡くなった場合は、早くから受け取っていたほうが多く受け取れたことになります。どちらが得かは、先には分かりません。北海道の佐藤さんは、60歳で早めた判断を、当時の事情では合理的だったと感じています。今は、遅らせていたらどうだったかを考えることもあるといい、60歳まで早めた場合は−24.0%の減額で、1か月早めるごとに0.4%減ります。
| 受け取り始める年齢 | 増減 | 月額 | 80歳までの累計との差 |
|---|---|---|---|
| 60歳(繰上げ) | −24.0% | 152,000円 | 早く始まるが生涯減ったまま |
| 65歳(そのまま) | ±0 | 200,000円 | 基準 |
| 70歳(繰下げ) | +42.0% | 284,000円 | 約81歳で65歳受給に追いつく |
| 75歳(繰下げ) | +84.0% | 368,000円 | 約86歳で65歳受給に追いつく |
※ 増減率は国民年金法施行令 第4条の5(繰下げ・1か月0.7%)と 第12条の4(繰上げ・1か月0.4%)による。月額は税・社会保険料を引く前の額。「追いつく年齢」は受け取り総額が並ぶ時期の目安で、実際は課税や加給年金で前後する。
同じ年金でも、住む場所で重みが変わります
年金の額は全国どこでも同じ基準で決まりますが、使う場所によって重みは変わります。物価がいちばん高いのは東京都(104.2)。いちばん低いのは群馬県(96.2)。その差は8.0ポイントです。
月20万円を基準にすると、この差は月15,962円、1年では191,540円にあたります(2025年のデータ)。北海道は物価そのものも高いほうですが、事情は東京都とは違います。光熱・水道だけを見ると、いちばん高いのは北海道(117.8)。いちばん低い大阪府(90.6)との差は27.2ポイントあります。冬の暖房費が暮らしを重くします。
| 順位 | 都道府県 | 総合 | 食料 | 光熱・水道 |
|---|---|---|---|---|
| 高い1位 | 東京都 | 104.2 | 102.9 | 93.7 |
| 高い2位 | 神奈川県 | 103.3 | 102.8 | 99.4 |
| 高い3位 | 北海道 | 102.4 | 102.5 | 117.8 |
| 安い1位 | 群馬県 | 96.2 | 95.5 | 103.0 |
| 安い2位 | 鹿児島県 | 96.4 | 99.0 | 97.1 |
| 安い3位 | 長野県 | 96.9 | 95.0 | 104.3 |
※ 総務省「小売物価統計調査(構造編)10大費目別消費者物価地域差指数」による。全国平均を100としたときの水準。数字が大きいほど同じものを買うのに多く払う。総合では安い県でも、光熱・水道だけは高いことがある。寒い地域の暖房費が効くため。
何から確かめればいいか
まず、ねんきん定期便を確認します。そこには、いま受け取れる年金の見込み額が書かれています。遅らせた場合や早めた場合の見込みは、ねんきんネットか年金事務所の窓口で調べられます。分からないことは、窓口で聞くのがいちばん早いです。
根拠となる条文
増える率と減る率の根拠になる条文を、法令データからそのまま載せます。
厚生年金保険法第四十四条の三(支給の繰下げ)
老齢厚生年金の繰下げ。基礎年金とは別々に選べる。
老齢厚生年金の受給権を有する者であつてその受給権を取得した日から起算して一年を経過した日(以下この条において「一年を経過した日」という。)前に当該老齢厚生年金を請求していなかつたものは、実施機関に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。ただし、その者が当該老齢厚生年金の受給権を取得したときに、他の年金たる給付(他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金並びに障害基礎年金を除く。)をいう。以下この条において同じ。)の受給権者であつたとき、又は当該老齢厚生年金の受給権を取得した日から一年を経過した日までの間において他の年金たる給付の受給権者となつたときは、この限りでない。
一年を経過した日後に次の各号に掲げる者が前項の申出(第五項の規定により前項の申出があつたものとみなされた場合における当該申出を除く。以下この項において同じ。)をしたときは、当該各号に定める日において、前項の申出があつたものとみなす。老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して十年を経過した日(次号において「十年を経過した日」という。)前に他の年金たる給付の受給権者となつた者他の年金たる給付を支給すべき事由が生じた日十年を経過した日後にある者(前号に該当する者を除く。)十年を経過した日
第一項の申出(第五項の規定により第一項の申出があつたものとみなされた場合における当該申出を含む。次項において同じ。)をした者に対する老齢厚生年金の支給は、第三十六条第一項の規定にかかわらず、当該申出のあつた月の翌月から始めるものとする。
第一項の申出をした者に支給する老齢厚生年金の額は、第四十三条第一項及び第四十四条の規定にかかわらず、これらの規定により計算した額に、老齢厚生年金の受給権を取得した日の属する月の前月までの被保険者期間を基礎として第四十三条第一項の規定の例により計算した額及び第四十六条第一項の規定の例により計算したその支給を停止するものとされた額を勘案して政令で定める額を加算した額とする。
第一項の規定により老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる者が、その受給権を取得した日から起算して五年を経過した日後に当該老齢厚生年金を請求し、かつ、当該請求の際に同項の申出をしないときは、当該請求をした日の五年前の日に同項の申出があつたものとみなす。ただし、その者が次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。当該老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して十五年を経過した日以後にあるとき。当該老齢厚生年金の受給権を取得した日から当該請求をした日の五年前の日までの間において他の年金たる給付の受給権者となつたとき。
e-Gov法令検索で条文全体を見る /この法令の最終更新 2025-11-13
国民年金法施行令第四条の五(支給の繰下げの際に加算する額)
繰下げたときに加算する額。1か月あたり千分の七(0.7%)。
法第二十八条第四項(法附則第九条の三第四項において準用する場合を含む。)に規定する政令で定める額は、法第二十七条(法附則第九条の三第二項においてその例による場合を含む。)の規定(昭和六十年改正法附則第十七条の規定が適用される場合にあつては、同条第一項の規定)によつて計算した額に増額率(千分の七に当該年金の受給権を取得した日の属する月から当該年金の支給の繰下げの申出(法第二十八条第五項の規定により同条第一項の申出があつたものとみなされた場合における当該申出を含む。)をした日の属する月の前月までの月数(当該月数が百二十を超えるときは、百二十)を乗じて得た率をいう。次項において同じ。)を乗じて得た額とする。
法第四十六条第二項において準用する法第二十八条第四項に規定する政令で定める額は、法第四十四条の規定によつて計算した額に増額率を乗じて得た額とする。
e-Gov法令検索で条文全体を見る /この法令の最終更新 2026-04-15
国民年金法施行令第十二条の四(法附則第九条の二の二第四項の政令で定める額)
繰上げたときに減らす額。1か月あたり千分の四(0.4%)。
法附則第九条の二の二第四項に規定する政令で定める額は、法第二十七条の規定によつて計算した額に前条の規定により算定した率を乗じて得た額に減額率(千分の四に請求日の属する月から六十五歳に達する日の属する月の前月までの月数を乗じて得た率をいう。)を乗じて得た額とする。
e-Gov法令検索で条文全体を見る /この法令の最終更新 2026-04-15
国民年金法第九十四条(保険料の追納)
保険料の追納。納め忘れた分をあとから納めて年金額を戻せる。
被保険者又は被保険者であつた者(老齢基礎年金の受給権者を除く。)は、厚生労働大臣の承認を受け、第八十九条第一項、第九十条第一項又は第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料及び第九十条の二第一項から第三項までの規定によりその一部の額につき納付することを要しないものとされた保険料(承認の日の属する月前十年以内の期間に係るものに限る。)の全部又は一部につき追納をすることができる。ただし、同条第一項から第三項までの規定によりその一部の額につき納付することを要しないものとされた保険料については、その残余の額につき納付されたときに限る。
前項の場合において、その一部につき追納をするときは、追納は、第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料につき行い、次いで第八十九条第一項若しくは第九十条第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料又は第九十条の二第一項から第三項までの規定によりその一部の額につき納付することを要しないものとされた保険料につき行うものとし、これらの保険料のうちにあつては、先に経過した月の分から順次に行うものとする。ただし、第九十条の三第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料より前に納付義務が生じ、第八十九条第一項若しくは第九十条第一項の規定により納付することを要しないものとされた保険料又は第九十条の二第一項から第三項までの規定によりその一部の額につき納付することを要しないものとされた保険料があるときは、当該保険料について、先に経過した月の分の保険料から追納をすることができるものとする。
第一項の場合において追納すべき額は、当該追納に係る期間の各月の保険料の額に政令で定める額を加算した額とする。
第一項の規定により追納が行われたときは、追納が行われた日に、追納に係る月の保険料が納付されたものとみなす。
前各項に定めるもののほか、保険料の追納手続その他保険料の追納について必要な事項は、政令で定める。
e-Gov法令検索で条文全体を見る /この法令の最終更新 2025-07-14
よくある質問
繰り下げれば必ず得をしますか?
繰り下げを選んだあと、やっぱり早く受け取りたくなったら?
物価の差は、これからも同じですか?
この記事が参照した一次情報
- e-Gov法令検索(デジタル庁)(2026-09-25 取得)
- 総務省統計局 小売物価統計調査(構造編)(2026-09-25 取得)
数値は上記の公表資料から機械的に取得しています。 制度の適用可否は必ず公式サイトまたは窓口でご確認ください。