相続放棄した土地はどうなる?管理義務と国庫帰属を条文で確認
いらない土地を相続したくないとき、相続放棄の期限は知った時から3か月だ。放棄しても管理が残る場合と、放棄できずに国庫帰属を申請する場合があり、民法と国庫帰属法の条文を並べて違いを整理した。
放棄は3か月以内に家庭裁判所へ申述する
相続放棄の入口は、民法第915条の3か月だ。相続の開始を知った時から3か月以内に、承認するか放棄するかを決める。調べる時間が足りないときは、利害関係人などの請求で、家庭裁判所が期間を伸ばせる。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
e-Gov法令検索で条文全体を見る /この法令の最終更新 2026-06-24
放棄は、その旨を家庭裁判所に申述して行う(民法第938条)。親族に口頭で「いらない」と伝えただけでは放棄にならない。放棄が認められると、その人は「初めから相続人とならなかったものとみなされる」(第939条)。土地の所有者になる可能性は、ここでなくなる。
放棄しても管理だけは残ることがある
ところが、放棄した瞬間に土地と縁が切れるとは限らない。民法第940条は、放棄の時にその財産を「現に占有しているとき」の義務を定めている。
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
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条文の読みどころは「現に占有している」と「引き渡すまで」の2点だ。たとえば実家に同居していた人は、土地や建物を現に使っている。放棄後も、次の相続人や清算人に引き渡すまでは、自分の財産と同じ注意で保存する責任が続く。遠方に住み、土地に立ち入ったこともない人は、この義務の対象にならない可能性がある。ただし、当てはまるかどうかは事情で変わるため、申述の段階で家庭裁判所や専門家に確認しておきたい。
もう一つ見落としやすい点がある。相続人全員が放棄すると、権利は次の順位の人へ移っていく。子が全員放棄すれば親や兄弟姉妹が、新たな相続人になる場合がある。親族に一言伝えておかないと、突然通知が届く人が出る。
放棄できないときの選択肢は、土地の国庫帰属
土地だけを手放したいのに、ほかの財産は受け取りたい場合は、相続放棄が使えない。放棄は相続全体を断る手続きだからだ。そこで使えるのが、2023年に始まった相続土地国庫帰属制度である(法律の正式名称は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」)。
土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。
3 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
e-Gov法令検索で条文全体を見る /この法令の最終更新 2025-06-01
申請できない土地は5類型ある。いちばん引っかかりやすいのは1号で、建物が建っている土地は対象外だ。実家の敷地は、まず建物を取り壊すかどうかの判断から始まる。承認の段階でも、崖がある土地や、地上に工作物・樹木があって管理や処分を妨げる土地などは、承認されない(第5条第1項)。申請には、法務省令で定める手数料も要る(第3条第2項)。
| 相続放棄 | 土地の国庫帰属 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 民法第915条・第938条・第939条 | 国庫帰属法第2条・第5条 |
| 手続きの先 | 家庭裁判所に申述 | 法務大臣に承認を申請 |
| 期限 | 相続の開始を知った時から3か月 | 条文に期限の定めはない(相続等で取得した土地が対象) |
| 手放す範囲 | 相続財産のすべて | 申請した土地だけ |
| 使えない場合 | 単純承認とみなされる行為をした後など | 建物がある土地、担保権が付いた土地など5類型 |
※ 条文の内容をもとに作成。個別の事案では、家庭裁判所・法務局・専門家への確認が要る。
土地を相続したときの確認順
- 相続開始を知った日を書き出し、3か月の期限日を決める(民法第915条)
- 土地の登記簿で、建物・抵当権・境界の状況を確かめる(国庫帰属法第2条第3項)
- ほかの財産も不要なら相続放棄、土地だけ不要なら国庫帰属の可否を調べる
- 現に土地や建物を使っている人は、放棄後の保存義務(民法第940条)を専門家に確認する
- 調査の時間が足りないときは、期間の伸長(民法第915条ただし書)を家庭裁判所に請求する
よくある質問
相続放棄をすれば、実家の庭の草刈りもしなくていいか。
建物付きの土地は国庫に引き取ってもらえるか。
放棄の3か月に間に合わないときは。
この記事が参照した一次情報
- e-Gov法令検索「民法」第915条・第938条〜第940条(2026-10-03 取得)
- e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」第2条〜第5条(2026-10-03 取得)
数値は上記の公表資料から機械的に取得しています。 制度の適用可否は必ず公式サイトまたは窓口でご確認ください。